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虹診療所

お子さんに多く見られる病気・症状について、家庭でのケア、受診のタイミングなどをできるだけわかりやすくお話しし、お子さんの健康をサポートしていきます。
No  31

おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)-ワクチン接種の重要性について-

 日本におけるおたふくかぜワクチン(以後ムンプスワクチン)は、希望者が有料で接種する任意接種になっています。これは、重篤な合併症が少ないと認識されていたためですが、最近の調査で難聴の合併率が予想以上に高いことが分かってきたこともあり、一部の自治体では公費助成も行われています。
 今回は、ワクチン接種の重要性が問われることになってきたおたふくかぜ(流行性耳下腺炎)についてお話します。






 おたふくかぜとは? 

 ムンプスウイルスによる感染症で、唾液腺(耳下腺、顎下腺、舌下腺)が腫れるのが特徴です。患者の咳やくしゃみのしぶきを吸い込んだり、唾液で汚染されたものとの接触でうつり、体内に侵入したウイルスは、鼻・咽頭やその周囲のリンパ節で増殖し、2~3週間後に発症します。
 多くの場合、頬やあごにかけての痛みと腫れで発病に気付きます。この12~24時間前から寒気、頭痛、筋肉痛、微熱などを認めることもあります。頬の腫れは1~3日でピークに達し、特にすっぱい物や硬い物を食べると痛みがひどくなります。症状の程度は様々で、頬の腫れにともなって、高熱の出る人もいれば熱の出ない人もいます。頬も両側腫れる人が1/3、片側が1/3、全く腫れない人も1/3もいます。 
 症状が出ない場合を不顕性感染と言って、全く腫れない人たちは、おたふくかぜにかかったことに気付かずに免疫を獲得することになります。
 治療は特別なものはなく、痛みや熱に対しての対症療法(解熱鎮痛剤投与)を行うだけです。腫れがひけば、感染力もなくなるので登校・登園は可能となります。おおむね1週間前後です。


 合併症 

① 難聴
 ムンプスウイルスは、髄膜や内耳などの中枢神経系に感染を起こしやすい特徴があります。ムンプス難聴は、片側に急性発症し聴力損失は重症で治り難く、重要な合併症です。世界的な小児科教科書には15,000人に1人程度のまれな合併症と記載されています。しかし、難聴を合併する好発年齢は2~10歳で、片側性の発症が多いため、症状をうまく訴えられない子どもが見落とされてた可能性があります。2000年以降のいくつかのムンプス難聴調査結果では、驚くことに200~500人に1人と高確率であることがわかって来ました。

② 無菌性髄膜炎
 激しい頭痛、嘔吐、発熱が主な症状で、患者の5~10%に合併します。安静にしていれば1週間前後で治りますが、経口摂取が出来ないようならば入院が必要となることもあります。経過中、頭痛や嘔吐が目立つようでしたら、まずはかかりつけ医に相談しましょう。

③ 睾丸炎、卵巣炎
 思春期以降の男性患者の20~30%に合併し、1/3の人は両側の睾丸が腫れます。睾丸の腫れと痛みがひどく、歩くことも出来ません。発熱、嘔気もともない、1週間くらいベット上安静が必要となります。その後50%に睾丸の部分的萎縮が認められますが、幸い不妊の原因になることはまれです。
 思春期以降の女性患者の5%に卵巣炎が合併します。虫垂炎と似た症状で気付かれるようですが、排卵障害を起こすことはないようです。

④ 膵炎
 全体の4%に膵炎が合併しますが、子どもではまれです。強い嘔気・嘔吐と腹痛が起こりますが、重症例はきわめて少ないようです。

 ワクチン接種の重要性 

 ムンプスワクチンは、先進国の多くで麻疹・ムンプス・風疹混合ワクチン(MMR)として2回定期接種されています。日本でも1988年からMMRワクチンが定期接種として始まりましたが、ムンプスワクチンによる無菌性髄膜炎の合併が約500人に1人も見られたため5年間で中止となりました。その後改良されたムンプスワクチンでは髄膜炎の合併は激減しましたが、この副反応の問題が尾を引いて、現在でも定期接種になっていません。
 ムンプスワクチン接種1回の有効率は、他のワクチンに比べて少し低いといっても85~90%で、予防効果は十分期待できます。前述の通り、予想以上に難聴の合併率が高いことが判明してきましたので、今後は幼児期早期(1歳以降)からのムンプスワクチン接種を積極的に勧めるべきと考えています。


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